それは何事かと腰が引けるくらいの厳重警戒の中、これでもかという謎の機械(いやカメラなんだが)に囲まれて行われた。
「トルコさんは彫りが深いんですから斜めの角度で目線を…」
「ウエストから腰へのライン重要なんです!」
「ええっまだ顔は影にしなきゃだめなんですか?折角モザイクじゃないのに?もうっ仕方が無いですね…!!」
逆光でーす!
日本の傍らにいたスタッフの声でガガガッとまた照明器具が入れ替わる。
「トルコさん入りまーす!」
「「「お願いしまーす!!」」」
「あ、トルコさん、メイクお疲れさまです!」
もう器具はスタンバイできてますよーとニコニコする日本にトルコは溜息をついた。
「おい日本…」
「はい、なんでしょう?」
「トレカってーのの撮影のときは、もっとこう違ったんだがよお」
「はい!以前より気合入っておりますよ!トルコさん布教画像大作戦(プロジェクト)ですからね!」
「いや…あのな…別嬪のダンサーだってんならまだわかるけどよぉ…」
「トルコさんは別嬪さんですよ?いつものように自信を持って笑ってくださいね!」
「…おう。」
しまった、言えなかった。あのキラキラしい笑顔が悪い。
まあ、写真ってのは嫌いじゃねえんだけどよ…。
限度ってものがあるだろうと、言いたかったのだが…ダメだ俺ぁあの顔した日本に勝てた例がねえんだ。
やる気の日本は止まらない、しかもノリノリでオタクモードで押しが強い可愛い笑顔…。
ちくしょう、これでギリシャもガキのなりで昔の衣装にOKしやがったんだな。昔は俺の事変態だなんだっつってあの服嫌がってやがったくせに…。
確かに可愛いんだよなぁ。
「トルコさん!角度はこのへんで、こうくるっと回ってみてください。」
「へいへい。」
「笑顔ですよー」
「おうよ」
「カメラテストでーす、まわってくださーい」
「こうかー」
「ああ、いい感じです、ああん素敵ですトルコさんv斜め顔に目線の角度が憎らしいですvv」
日本が普段にない饒舌で、聞き慣れない褒め言葉に緊張気味だったトルコも目元が緩む。
その後、日本の指示で顔の角度が数パターンが決まり、あとは自由に動いて良し。
「お花も散らしちゃいましょう!ロマンチック度アップです!」
「へいへい、もう、お好きにしてくれ、お姫さん」
「トルコさん、腰のライン出してくださーい」
「こうかい?」
両手をあげれば、あ、それですそれそれ!と食いつかれた。
しょうがないカメラマンだねぇと苦笑して、おっと歯ぁ見せちゃいけねえんだっけかとあわてて口を閉じ、こうかねと日本を見て笑いかければカメラから顔を上げた日本と目があった。
「おい日本?」
「トルコさん今の顔は反則です!!!」
なんだってんでぇ?
結局日本の言う反則が、お披露目の1枚に決定した。
後日、完成したブロマイドだかなんだかを前に、日本は難しい顔をしていた。
「やっぱり仮面をつけて頂くべきでしたか…」
「おいおい。」
「…冗談です。」
プイと横を向いた日本に、威力あるんですから自重してください!と怒られた。
なんにせよ、可愛い日本が見られたのでまあいいかとトルコは日本を抱きしめた。
「わーもう、なんなんですか!」
「ご褒美もらってねえからな!」
ンーっと、唇を重ねるふたりに、腕のナザレボンジュウは呆れたように目を閉じた。
目もあてられないバカップルには、嫉妬の視線も届くまい。