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東と西に離れ座すふたり。嗚呼どうか、世界が平和でありますように。
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「あらまあ、直撃ですね」
「いや、テレビの天気図見なくても今まさに揺れてるのがそうだろぃ」
「天気予報さんのことですから、危ない危ないってゆってなんだ大したことなかったじゃないですかーうふふふーよかったねー…だと思ってましたよ~って鹿の国のひとがゆってます。」
「つまり、今すげえびびってる、と。」
「そのようですねー家もげるんじゃないかって心配してます。築10年で屋根無しは困りますよね。」
「台所で換気扇の外蓋ガンガン鳴ってるぜ」
「うるさいからお台所の扉を閉めてきて頂けますか?」
「おう。」

「ベランダのドアって…普段は雨かかんねえよなあ。」
「そうですねえ、雨の日でも陰干しできる仕様ですからねえ。」
「ドアに雨粒打ちつけてる音がすんだが…」
「風が凄いみたいですねえ、停電とかならないといいんですけど」
「いや、窓割れねえか?」
「大丈夫ですよーこう見えて二重ガラスだそうですよ(注:日本さんちは、です)」
「お前…」
「はい?」
「いや、まあ度胸があんのは知ってたがよ、怖くねえのかい?」
「雷のある嵐ですと、ちょっと恐ろしいですけど…まぁ台風ですし…屋根が飛んだら困りますけど近くの小学校へ行けば当座はなんとかなりますし。」


「ああ、でも少し冷えますねえ、そろそろ休みましょうか。」
「…いや家揺れてんだが?」
「まぁそのうち止むでしょうし」
「…いや避難勧告とか出てなかったかさっき」
「お隣の県は出てましたねえ」
「…あのな」
「はいはい、無用心ってことですね、わかりました。」
もう、と日本はおしいれからずるずると大きなリュックをひっぱりだした。
「こっちがあなたのですよ、氷砂糖も入ってます。忘れちゃったら糖分補給できませんからね。」
トルコに向かってポンポンと叩いて見せる。
「さあ、これで文句ありませんよね!私は寒くて眠いんですっ。」
たっと寝間に行ったかと思うと布団を抱えて戻ってきた。
「はい、ちゃっちゃと寝ますよ。」
トルコの肩に布団をかけて、日本はトルコのあぐらの上に乗りトルコの腕を両肩にのせ抱えると、布団の端をひきあわせ、自分がすっぽり入るようにくるまった。
「静かになったら、お布団に運んでくださいね。」
ちゅっとトルコの頬にキスをしておやすみなさい、と目を閉じた。
そわそわとあちらの音こちらの音を気にして落ち着かなかったトルコは、腕の中膝のうえ、温かい柔らかい日本の温度を感じて、今度は別の意味で落ち着けなくなりそうだ。

けれど不安は少し、収まった。
暗い海、圧倒的な水圧と風圧に消失への恐怖、激しい嵐の夜はあの日を思いだし気がそぞろになる。
けれどこの温もりは、いつも自分を安寧へと誘う。
守るものがある、自分が守るのだというその誇りがトルコに大地を思い出させる。

ふー…と大きく息をひとつ吐き日本を抱えなおして、トルコは呆れるように呟いた。
「まったく、呑気な嫁さんでえ。」
これでもかと優しい笑顔で。




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装甲悪鬼村正 二〇〇九年一〇月三〇日、物語がはじまる。

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